逆流性食道炎


 

☆逆流性食道炎とは☆

  強い酸性の胃液や、胃で消化される途中の食物が食道に逆流してそこにとどまる

                  ↓
                  ↓ 食道が炎症
                  ↓

          びらん(粘膜がただれること)
          潰瘍(粘膜や組織の一部がなくなること)を生じる病気     


☆症状☆  胸やけ や 胸の痛み
  など

    逆流性食道炎は、もともと日本人には少ない病気でしたが、
    食生活の変化などによって、最近患者さんがふえている。


 

☆1.逆流性食道炎が起こるメカニズム☆


健康な状態では、

@強い刺激性のある胃液が食道に逆流しない仕組みが働いている(下図参照)。

                     
 その主役は下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)※

     下部食道括約筋 ― 食道と胃のつなぎ目(噴門部)にある筋肉
     食べた物を飲み込む時には、ゆるんで食道から胃に食べ物が落ちるようにし、
     それ以外の時は、食道をしめて、胃の内容物が逆流しないようにしている。



 


A食道のぜん道運動(下図参照)  
  (消化管が筋肉の収縮により口から食べたものを肛門側へ運搬していく運動)
             ↓
             ↓ 胃の内容物が逆流してしまってもすばやく胃へ戻す
             ↓ 唾液を飲み込むことによって食道に入った胃液を薄めて流す
             ↓
             ↓
      食道が胃液や胃の内容物で傷つかないようにしている。


     

逆流性食道炎は、下部食道括約筋など食道を逆流から守る仕組み(@)が弱まるか、
         胃酸が増えすぎることで、胃液や胃の内容物が逆流し(Aの破綻)、
               ↓
      それが食道の中にしばらくとどまるために起こる。



図.食道への逆流を防ぐ仕組み

 


☆2.逆流性食道炎の原因
   
食事の内容(脂肪、たんぱく質)、加齢、姿勢、肥満など


   @脂肪の多い食事、食べ過ぎ

脂肪分のとりすぎや食べ過ぎによって、何も食べていない時に下部食道括約筋がゆるみ、
   胃液が
食道に逆流してしまうことがある。

  脂肪の多い食事をとった時に
   (1)十二指腸から分泌される
コレシストキニンというホルモンの働き
      (2) たくさんの食事で胃が引き伸ばされること
             ⇒下部食道括約筋がゆるむと考えられている。


    (3)脂肪の多い食事は、胃酸を増やすことによっても胃液の逆流を起こしやすくする。

Aたんぱく質の多い食事

  たんぱく質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、
    胃酸の逆流が起こりやすく
なる。

B加齢

  年をとると、
    (1)下部食道括約筋の働き
が悪くなる
    (2)
食道のぜん動運動だ液の量なども少なくなる
            ⇒逆流した胃液を胃に戻すことができなくなる。

C背中の曲がった人

  背中が曲がると、おなかが圧迫され、胃の中の圧力が高くなるため、
    胃液の逆流が起こりやすく
なる。

D肥満

肥満の人は、
(1)逆流性食道炎の原因のひとつである食道裂孔ヘルニアになりやすいことがわかっている。
(2)腹圧が上がることで、逆流しやすくなるともいわれている。



   ☆3.ピロリ菌と逆流性食道炎☆

 ピロリ菌は胃の中に生息する細菌で、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気の原因のひとつ。

 ピロリ菌に感染している人の割合が高い国は逆流性食道炎の患者さんが少ないことがわかっている。

 これは、ピロリ菌によって胃に炎症が起こると、胃酸の分泌が少なくなるためと考えられている。




 ☆胸やけ・呑酸(どんさん)☆

  胸やけ:
胃液や胃の内容物が食道に逆流すると、胸のあたりに焼けるような不快な感じがする

  「呑酸」:酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップが出るひどい時は吐いてしまうこともある。

☆胸の痛み☆

  胸がしめつけられるような、狭心症に似た痛みを感じることがある。

☆咳・喘息☆

逆流した胃液→のどや気管支を刺激
       食道の粘膜を
通して神経を刺激 → 咳や喘息が起こると考えられている。

  ( 逆流性食道炎の治療を行うと、喘息の症状が改善する患者さんもいる。)

☆のどの違和感・声がれ☆

  逆流した胃液 → のどに炎症が起こり、違和感や痛みを感じることがある。
       ↓
  ひどくなると食べ物が飲み込みづらくなったり、声がかれたりすることもある。



☆生活習慣の改善☆

  逆流性食道炎の治療でまず大切なのは、
  食事、姿勢、服装など、逆流性食道炎を起こす生活習慣を
変えていくこと。

  ☆薬物療法☆

    生活習慣の改善だけでは、症状を完全になくすのは難しいため、多くの患者さんは
   生活習慣の改善と
あわせて薬による治療を行う。
   薬による治療を始めると、多くの方ではすみやかに症状はなくなる。

  ただ、症状がなくなっても、食道の炎症、びらん、潰瘍はすぐに治るわけではないため、
  しばらくは
薬を飲み続ける必要がある

  また、現在使われている薬では、胃から食道への逆流を根本から治すことはできないため、
  治癒した
後に服薬をやめると再発する方が少なくない。
   そうした方では、薬を長い間飲み続ける治療(維持療法)も行われる。

  ☆手術☆

  生活習慣の改善や薬で効果がなかった時、再発を繰り返す時には、手術を行うことがある。
  最近は、内視鏡の一種である腹腔鏡を使った手術が増えてきている。





  逆流性食道炎の薬としてもっとも効果が高く、よく使われるのは、
  @胃酸の分泌を抑える薬

    食道へ逆流している胃酸を少なくすることで、逆流性食道炎の炎症や症状を改善する。

   A食道の粘膜を保護する薬
  
B胃酸を中和する薬、胃の運動を活発にする薬一緒に飲むこともある。

☆ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)(@)☆

 胃の分泌腺にある壁細胞(へきさいぼう)には、
 ヒスタミンという物質が結合すると胃酸が分泌される
2受容体という部分がある。

 この薬は、ヒスタミンがH
2受容体に結合するのを妨げることによって、胃酸の分泌を抑える。


☆プロトンポンプ阻害薬(@)☆

 胃の分泌腺にある壁細胞には、胃酸を分泌するプロトンポンプという部分がある。
 この薬は、
そのプロトンポンプの働きを妨げ、胃酸の分泌を抑える。

 症状がある時に使われるほか、
 再発を繰り返す場合には、再発防止のために薬を服用し続けることも
ある。

 

☆粘膜保護薬(A)☆

 食道の粘膜をおおって、逆流してきた胃液から食道を守り、炎症の改善を助ける働きがある。

 効果のある時間が短いため、多くの場合、胃酸を抑える薬と一緒に使われる。

 

☆制酸薬(B)☆

 胃で分泌された胃酸や、食道に逆流してきた胃酸を中和して、
 食道粘膜が障害される程度を軽くしたり
症状を速やかに和らげる働きがある。

 効果のある時間が短いため、多くの場合、胃酸を抑える薬と一緒に使われる。



☆食生活を改善しましょう☆

  脂肪分たんぱく質の多い食事をとりすぎないようにすることが大切である。

他に、
胃酸を増やしたり
胸やけの症状を悪くしたりすることのあるチョコレート・ケーキなどの甘いもの唐辛子・コショウなど香辛料、みかんやレモンなどの酸味の強い果物
消化の悪い食べ物などは、とる量を減らしましょう。

   
  一度にとる食事の量を減らし、腹八分目を心がけましょう。

☆アルコール、コーヒー、緑茶を減らしましょう☆

 アルコールは、胃酸の分泌を増やすと同時に、食道下部括約筋をゆるめることがわかっている。 アルコールはできるだけ控えましょう。

 コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも、胃酸の分泌を増やす。

☆肥満を解消しましょう☆

  食生活の改善とともに、適度な運動を行い、肥満を解消しましょう。

 

☆姿勢に注意しましょう☆

  姿勢と逆流性食道炎は深く関係している。日中は前かがみの姿勢を避けましょう。
  
  寝る時は、少し
上半身を高くして寝ると、逆流が起こりにくくなる。

  食後3時間くらいは、胃の内容物の逆流が起こりやすいといわれている。
  食後すぐに横になったり
寝る前に食事をとることは避けましょう。

 

☆おなかを締め付けないようにしましょう☆

  ベルト、コルセット、ガードル、着物の帯など、おなかを締め付けるものは、
  身につけないように
しましょう。